高齢者の性生活

2012.11.17

区民公開講座 平成24年11月17日のまとめ

尾関皮膚泌尿器科  尾関 全彦

 高齢社会を迎えた我が国においては、高齢者の生活の質の向上(QOL)が大きな課題であり、この生活の質の向上が鍵の一つであり高齢者の性の問題であると考えられます。高齢者では全身の老化の一部分現象として、内分泌環境性機能に変化が起こり、次いで性意識行動が影響される。

 性は何のためにあるかといえば生殖です。子を生み育て生命遺伝子を伝え、子孫を存続させることのために男女二つの性が必要だからであり、男性と女性の営む性行動によって新しい生命が生みだされ生殖の目的が達せられる訳です。

 SEXしたいと思う状態を性欲といい、このSEXしたい思う本体は、人間の大脳の前頭葉内の間脳のうち視床下部漏斗部というあたりにあり、このSEXする脳のことを性中枢と呼んでいます。この性中枢には刺激を受けて興奮する部分と逆に刺激を受けると抑制する部分とがあります。

 人間のSEXは、(性ホルモン)と(性中枢)それに(外的刺激)の三つの条件によって行われているとい言われています。性ホルモンには、男性ホルモンと女性ホルモンが3種類ずつあり、20歳~30歳までがピークであり、それ以降分泌は減少しますが、男女共死ぬまで性ホルモンは分泌しています。性ホルモンには、もう一つ脳から出る性腺刺激ホルモンがあります。このホルモンは男女共に50歳を過ぎてからの方が20歳代よりも血中濃度が高いそうです。外的刺激というのは、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚などの五感からの刺激で、特に重要なのはパートナーからの刺激である。例えば、容貌、容姿、教養、動作などの相手からの刺激である。

 年をとるとSEXが弱くなるのは、年とともに性ホルモンの血中濃度が低下する、性中枢の脳細胞が老化して刺激に対する感受性が弱まること、例えばSEXする脳が健全であってもSEXしない脳の方がストレスなどで機能が落ちていれば肉体的に健康であってもSEXできないことになる。人間の性中枢は大脳皮質によって調整されているから温度、季節、年齢に関係なく、いつでもSEXできるのです。従って死ぬまでSEXを楽しみたい人は、SEXしたい脳、すなわち大脳皮質である頭を鍛えることが大切です。

 高齢者の性機能に関して男性では、精巣の萎縮、勃起能力の低下が50歳頃より進行してくる。女性では更年期以降が加齢に伴い、外陰、膣、子宮、卵巣などの性器が萎縮してくる。

 加齢に伴ない性欲は減退するが、男性では50歳代、女性では40歳代で、性欲の減退を感じ始める者が最も多い。しかし両性ともに性欲は高齢者にても比較的よく保たれる。外性器の退行性萎縮の結果、局所の充血、感度、分泌物の減少、反応時間の遅れ、勃起陰茎の硬度の低下などにより全身の反応も減退する。

 高齢における性交頻度は個人差がありますが、40歳を過ぎると徐々に低下し始め、60歳以降には低下が著しくなります。40代までは数%ですが、60代前半では14.2%、80代で62.6%となっています。一方性的欲求は、男性では70歳代まで90%が性欲を維持し続けています。60歳代では日本も欧米でも性交は週1回以下が多い。性欲の加齢による変化は、異性を目で見て楽しみ、接触したいという欲望は高齢に至るまで保たれています。男性では、ワイセツ物に興味を示し、テレビのお色気番組やY談などで性意識を高めているようです。

 性交を停止した年齢は女性では40代後半に認められ閉経と一致しております。各年代にわたって性交頻度は徐々に低下していますが、90歳代まで性交を行っているものもあります。

 性交を中止した理由は、男性の場合は能力の消失が最大の理由であり、女性の場合は配偶者の死亡が最大の原因です。

 職業別の性生活を豊かにしているのは、頭脳労働者が1位で、次いで肉体労働者で無職の者より性的能力を多く保たれている。経済面からみると、当然のことながら経済的に豊かなほど性生活が豊かになる傾向がみられる。

 性生活に対する満足感に関して、妻が健在な老人でも、その47%は性的不満を持っているといい、その原因は妻が応じてくれないという答えが26%あった。男子老人全体では、性的不満グループは70%にも達している。なぜ相手が応じないのか女子の57%が性的欲求は全くないと答え、また異性との交際は面倒くさいと答えています。

 男子の性的能力の減退、「インポテンツ」現在はEDといいますが心理的、器質的要因が原因ですが、数年前より勃起力を助けるED治療剤が発売され、非常に高い効果がありますので、専門医に相談して下さい。ただし、保険医療は使えません。

 独身老人は異性との交際を、男子老人が90%、女子は25%が望んでいます。しかし交際の見通しとなると、「だめだろう」が男子75%、女子82%となっています。その原因としては、男子では「トシだからあきらめる」が38%、「家族や世間体」が28%、女子では「家族や世間体」を42%が気にし、男子の「トシだから」を上回って女子の性に対しての社会的規制が強く感じられます。

 結論として、一般に高齢者における性反応、性行動の減退、低下の原因としては、
(1) 性反応の速度の変化
(2) 反復による単調さとマンネリ化
(3) 精神的、肉体的疲労の蓄積
(4) 生活上の不摂生、とくにアルコール、ニコチン中毒
(5) 糖尿病、高血圧、心臓病、うつ病などの不安
(6) それらの病気の予防、治療薬の長期使用
(7) 仕事や趣味への没頭による無関心
(8) 精神的若さの消失、性意識の変化
(9) 社会的背景となる高齢者本人への心理的負担、経済的負担

 最後に、高齢者だからといって、その性生活をエンジョイして悪いという理由はなく、老人は老人の性生活を楽しむ権利があります。一生懸命さんざん働いてきました。残り少ない人生を明るく、楽しく元気に暮らして行くよう皆さん、頑張って生きてゆくべきです。