髪と頭皮の健康を守ろう!

2013.06.29

区民公開講座 平成25年6月29日のまとめ

順天堂大学医学部皮膚科学
植木 理恵

 人の印象に髪型や髪の色は大切です。例えば同じ人が、七三分けのロマンスグレーの場合と、金髪でアフロヘアの場合では全く印象は異なります。髪は生命を維持するために必ず必要ではありませんが、自己表現の場であり、精神生活を安定させ、社会性を保つために重要です。朝、髪型がうまくいかないと、一日、もやもやした気分になりませんか?

 さて、脱毛とは何でしょう?

 脱毛は①生理的脱毛(人には同じ毛根が成長と休止を繰り返す毛周期があり、誰でも毎日髪が抜けます。1日100本以内の脱毛は正常範囲です)、②病的脱毛(生理的脱毛以上に髪が抜けたり、一部分だけ抜けて生えてこない場合など)の二つに大きく分かれます。

 病的脱毛の原因は、1.加齢、2.男性型脱毛症、3.先天性脱毛症、4.円形脱毛症、5.内臓疾患に随伴する脱毛、6.頭皮の皮膚病に伴う脱毛、7.薬物や放射線治療などの医原性脱毛、等です。ただし、加齢は個人差が大きいのですが誰にでも起きる変化で、男性型脱毛症は男性ホルモンにより毛を作る細胞の活動が弱まりやすい体質の方に起きる変化で、いずれも病気ではありません。

 最も多い病気の脱毛症は円形脱毛症です。赤ちゃんから高齢者まで発症する、毛根周囲に免疫の失調による炎症が起こり脱毛する皮膚病です。原因は自己免疫と考えられ、多くの人が思っているような精神的ストレスがきっかけとなる方は3割以下です。コイン大にまとまって抜ける場合が多いのですが、頭髪すべてが急激に抜けたり、眉毛・睫毛・体毛なども含めた全身の毛が抜ける重症な症状もあります。コイン大に1,2ヶ所抜けている程度では自然治癒も多いのですが、繰り返したり、3ヶ月たっても生えてこない場合などでは皮膚科で治療が必要です。急激に容貌が変化するので、発症後の精神的ストレスが高い病気です。

 いわゆる薄毛の原因には、加齢、男性型脱毛症、内臓疾患に随伴する脱毛症、頭皮の皮膚病に伴う脱毛、医原性脱毛があります。

 頭皮に生じた皮膚病が原因の場合、フケやかゆみを伴います。脂漏性皮膚炎は皮脂によってマラセチアという真菌(カビ)が増えて、フケ、赤み、かゆみを繰り返します。毛染めのかぶれがひどくなると頭皮がジュクジュクして髪が抜けてしまうこともあります。ペットからうつる真菌で毛が抜けることもあります。いずれも、適切な治療と日常の頭皮ケア(頭皮にあった洗髪など)が必要です。髪は皮膚の一部なので、頭皮が健康でないと健康な髪が作られません。

 甲状腺の病気や膠原病、糖尿病、貧血、低栄養でも髪が抜けます。特に女性では膠原病や甲状腺の病気が隠れていることがあるので、ご家族に膠原病や甲状腺の病気がある方は検査が必要です。大切なのは、全身の健康が保てないと髪の健康は保てないということです。尚、治療による医原性の脱毛もあるので、新しい治療開始後に抜け毛が増えた時は主治医に相談してください。

 男性型脱毛症は男性ホルモンの作用で、一部の領域(前頭部、頭頂部)の毛を作る働きが弱まり、成長期間が短く、休止期間が長くなり、細い毛が増える変化です。男性も女性も男性ホルモンに毛根が敏感に反応する体質の方に現れます。女性は男性より軽症です。男性ホルモンが多くなる思春期以降に始まり、男性では30歳位から気になる方が増えますが、中には20歳前後で症状が出てくる方もいます。病気ではありませんが、精神的ストレスを強く感じる方々が多く、男性ホルモンの作用を弱くする内服薬が男性向けに発売されています。血行を良くして、毛を作る細胞の活動を高める塗り薬は女性でも男性でも効果があります。尚、女性で、体毛が太く、生理不順がある場合は、卵巣の病気を調べることもあります。

 誰にでも生じる加齢変化は頭部全体の毛が細くなり、伸びが遅くなります。進行を遅くするには、毛根の細胞の活動を高めるために血行を良くするのが効果的です。市販の育毛剤の多くは血行を改善する作用があります。さらに近年、毛の研究が進み、毛の成長期を長くする成分や、毛の活動を弱める成分がわかってきて、育毛剤に応用されています。また、髪を育てるためにはバランスよく食べ、良質の睡眠をとることが大切です。洗いすぎで髪や頭皮が乾燥したり、抜けるのが怖くて洗わないと、皮脂で頭皮が荒れて髪の健康が損なわれます。ご自分の頭皮に合わせた洗髪の間隔とシャンプー剤を選びましょう。パーマや毛染めは髪と頭皮を傷めないように利用して下さい。髪の色が明るく、ふわっとしていると、地肌が目立たなくなります。お化粧や、明るい色の服を着て、髪に人の目がいかないように工夫するおしゃれも楽しんでください。

 全身の健康を保ち、自分にあった頭皮ケアで健康な髪と頭皮を守りましょう。