うつ・不安障害を なるべくお薬を減らしながら 治療するためのケア

2015.06.6

区民公開講座 平成27年6月6日のまとめ

リバーサイドメンタルクリニック
院長 鈴木 あい

 2015年 6月6日に江東区医師会 区民公開講座でお話をさせていただきました「うつ・不安障害を なるべくお薬を減らしながら 治療するためのケア」をご紹介させていただきますね。
 厚生労働省が 3年ごとに全国の医療施設に対して行っている「患者調査」によると、平成11年には44.1万人だったうつ病等の気分障害の総患者数は、平成 20年には 104.1万人と 9年間で 約2.4倍に増加しました。また、平成 14から 18年度に行われた、一般住民を対象とした厚生労働省の研究班(主任、川上憲人先生)の疫学調査では、何らかの不安障害を有する方の数は、一生のうちに一度は病気にかかる人の割合(生涯有病率)で 9.2%(約 10人に 1人)、12ヶ月間に一度は病気にかかる人の割合(12ヶ月有病率)では 5.5%(約 18人に1人)でした。患者調査では、平成11年には42.4万人だった不安障害などの総患者数は、平成20年には58.9万人と、9年間で約1.4倍に増加しました。

 このような傾向がある中で、うつ・不安障害をなるべくお薬を減らしながら治療したい、ということは現代社会のニーズであるようにも感じられます。  
 リバーサイドメンタルクリニック(http://riverside-mental-clinic.jimdo.com/)では、女性の患者様を対象に、お一人あたり約90分という時間をかけながら、カウンセリング、前世療法(退行催眠療法の一分野)、マインドフルネス(ストレス治療)などを用いて治療を行っております。
 リバーサイドメンタルクリニックを受診される患者様のニーズとしては、「なるべくお薬を用いずにメンタルのご病気を改善させたい」「できるだけお薬を減らしたい」というご要望が多いです。他の病院や公的機関などからの患者様のご紹介もいただくのですが、その場合、ご相談内容が保険診療の枠を超えており、かつカウンセリングや催眠療法が適していると判断されたケースがほとんどです。ですので、リバーサイドメンタルクリニックを受診される前に数年から10年以上の通院歴を持つ患者様もおいでです。

 僭越ではありますが、これまでの経験を元に、うつ・不安障害を なるべくお薬を減らしながら 治療するためのケアについて、お話をさせていただきますね。現在ご通院中の患者様が減薬を希望される場合には、必ず主治医と相談しながら進めてくださいね。
  まず、ここでいう「お薬」とは、例えば、抗うつ剤や抗不安薬などのことを指します。例えば、これらのお薬を減らしていこうとする時、一言で言うと、お薬で減らしている症状を、お薬以外の方法で減らそう、と考えることになります。それらのアプローチは、大きく分けて、

・体からのアプローチ
・生き方など心からのアプローチ
・人・社会へのアプローチ

に分かれます。ですが、変えていく方向は同じです。キーワードは「楽になる」です。自分の体と心、そして生き方が楽になり、さらに自分も人も幸せに楽になっていく方向に変えていきます。

  まず、体からのアプローチ(体のケア)では、一般的に健康づくりの基本となる、バランスのよい食事、適度な運動、睡眠、休息、規則正しい生活リズム等はメンタルのご病気の治療でも大切です。体が楽になっていくからです。

 運動では、自律訓練法・マインドフルネス(瞑想・ヨガなど)などのリラックス法を取り入れることをお勧めしています。マインドフルネスは、体のだるさ(倦怠感)や不眠の改善にも大きな効果が認められています。

 睡眠、休息に関して、うつ病や不安障害の患者様の場合には、例えば休むこと自体に罪悪感が生じることがあり、睡眠や休息を取っているように見えても、実際には十分休めていないことがあるため、治療ではその患者様がつまづきやすい点を含めて話し合いながら改善していきます。

 次に、生き方など心からのアプローチ(心のケア)でよく用いられる方法をいくつかご紹介いたしますね。これらは一般的に精神療法と呼ばれることが多いです。  

 まず、カウンセリング・認知行動療法は、自分の本当の思いを知って、自分らしい生き方につなげるために役立ちます。また、心と体を楽にする瞑想・ヨガなどのマインドフルネスは、不安状態、うつ状態に大きな効果が認められています。

 当院の専門でもある、退行催眠療法の一つである前世療法は、「 現世のみを扱っては見つけにくい生き方のくせを探ったり、現在抱えている課題(病気や人間関係など)の悩みのルーツを探ることで、それらの改善をもたらそうとする治療法」です(当院のホームページの一つである、前世療法センターのホームページ http://pastlifetherapy.jimdo.com/ より)。前世療法は、現在米国を中心に注目を集めている治療法で、当院でも、うつ・不安障害の治療において効果を認めています。詳しくは、前世療法センターのホームページや当院のブログ (http://ameblo.jp/past-life-therapy/) をご参照ください。

 そして、人・社会へのアプローチ(人・社会とのつながりのケア)についてです。人・社会へのアプローチでは、自分も人も幸せに楽になっていく方向に変えていきます。様々な方法がありますが、ここでは、メンタルのご病気の患者様が忘れがちな福祉のサポートについてお話しさせていただきますね。

 メンタルのご病気を長く抱えた患者様が自立をしようとするときに、つまづくことが多いのが就労です。患者様の中には、受診前に、ご自身の心の準備が整っていないにも関わらず、焦って無理矢理自分を鼓舞して自力で就職先やアルバイト先を見つけようとし、結果的に、仕事に就くことや、仕事を続けることができなかったご経験をお持ちの方もおいでです。中には、家に引きこもってしまわれた方もおいでになります。  

 そういった患者様が、福祉の就労支援、例えば、就労移行支援、就労継続支援などを通じて仕事のスキルを学び、障害者雇用枠で就職をしたことで、安定して就労に至ったケースもあります。就労支援を受けた時の支援者との出会いのおかげで、人に相談をすることが苦手で抱え込みやすい性格だった方が、困った時に相談をすることができるようになったというケースもあります。患者様は、福祉の支援を通じて、人とつながり、社会とつながることを学ばれたのです。

 ここで、これらのケアがどのように減薬につながっていくのか、お話しさせていただきますね。まず、これらのケアを学ぶことによって、患者様の気づきや腑に落ち感が増え、心身がリラックスし、少しずつ、ストレスのかかる状況によりよく対応できるようになっていきます。メンタルの症状への対応の仕方も学ぶため、次第に症状に自分自身で対応できるようになっていきます。これを、セルフケアの能力が高くなってきたという表現をすることがあります。  
 ご自身で(お薬を用いずに)症状に対応できるようになってくるため、少しずつうつ状態、不安状態は減ってくるのですが、この時点ではまだ、状況によっては、体調が不安定になることもあります。安定して症状が減っているわけではないため、一般的にこの時点ではまだ減薬の状態にはなっていません。

 これらのケアを学ぶことを継続していくと、次第にこれらの方法が身に付いていきます。小さな変化が積み重なってきて、心と体・人間関係・環境などが生きやすく変わってきます。そして少しずつ、生きることが楽になってきたと感じることも出てきます。この状況を、生きる力がついてきたと表現することもできます。

これを継続していくと、症状が強い時には嵐のように荒れ狂っているとすら感じた人生が、穏やかに整ってきます。そうすると、症状が安定して改善してきます。この時に減薬が可能になるわけです。

体調が改善しお薬が減ると、体もより軽く感じることが多いです。この感覚はとても心地の良いものです。ですので、これらのケアを学ぶためにはコツコツと努力することが必要となりますが、その労力はあっても、減薬できてよかったと思えることのほうが多いです。

診察を踏まえ、私が「減薬できる体調ですよ」とお伝えすると、満面の笑みでガッツポーズをされる患者様もおいでです。素敵でしょう?

これらのケアの治療法の利点は、その効果が長く続いたり、効果が時間と共により大きくなる可能性があることです。自分が変わることへの自信がつき、ストレスのかかる状況が生じても、より上手に対応できるようになってきます。また、お薬と比べ、副作用が少ないという利点もあります。続けることが大切なので、まずできるところから始めてみましょう。

お読みいただき、誠にありがとうございました。

注:この講座の内容について、よろしければ前世療法センターのホームページ (http://pastlifetherapy.jimdo.com/)もご参照ください。より詳しく内容をご紹介しています。