紫外線、当たっていいの?悪いの?

2017.04.8

平成29年4月8日(土)
ひふのクリニック人形町
上出 良一

1.紫外線の功罪
 紫外線は皮膚に急性(サンバーン)、慢性(皮膚癌、光老化)の障害をもたらす。最近は光老化によるしみ(日光黒子)、しわ・たるみの予防、改善が抗加齢の観点から注目されているが、自然の老化と光老化は質的に異なる変化であり、光老化は単に自然の老化が加速されたものではない。光老化は紫外線により真皮内に発生した活性酸素が蛋白分解酵素を活性化し、蛋白分解酵素が真皮の膠原線維、弾性線維を破壊し、その後の無秩序な再生により、真皮が変性したものである。また紫外線によるDNA損傷が表皮角化細胞の遺伝子変異を惹起し、そのため表皮細胞の増殖が異常となり、周囲のメラノサイトからのメラニン顆粒の受け渡しに異常をきたし、局所的にメラニンが集積し日光黒子となる。表皮角化細胞の増殖のコントロールが破たんすると、日光角化症のような前がん症が発症し、放置すれば有棘細胞癌に進展する。基底細胞癌、悪性黒子型メラノーマも発生する。

2.紫外線対策
 紫外線が強くなる春先、その年、最初の長時間外出に注意が必要である。冬の間に皮膚は白くなって、準備ができていない大型連休時のレジャーで思いがけない日焼けをしてしまう。また、梅雨の合間の晴れた日が危ない。夏至の頃、太陽高度が高く、紫外線が通過する大気層が薄いため紫外線量が多くなる。また、雨で大気がきれいになり、地表に届く紫外線が減衰しない。久しぶりに晴れて暑くなり、うっかり肌を露出してしまうことも多い。普段あまり日に当たっていない人は、特に注意を要する。黄色人種は白人と異なり、ほどほど紫外線に当たることで、メラニンが作られ、紫外線に抵抗力ができることがメリッテとしてある。
 紫外線の強い10-14時の外出は控え、日傘、帽子、衣類での紫外線防御を行うなどの日常的対策に加え、日焼けサロンや無用な日光浴を避ける。紫外線防御の最後の砦がサンスクリーン剤である。適切な使用は紫外線皮膚障害を防止することが示されている一方、不適切な使用ではその効果を十分に発揮できない。成人の体表面積は約1.6m2であり、たたみ1畳くらいである。サンスクリーン剤の能力を検定する規定量2mg/cm2を全身に塗布すると 2mg/cm2x16,000cm2=32,000mg=32g必要となる。しかし、調査してみると実際は0.5-1.0mg/cm2しか塗布していない。使用量が半分だと実際の防御能は半分以下に低下する。それを避けるために、2度塗りが推奨されている。実際の使用に当たっては、生活シーンに合わせたサンスクリーン剤の選択が望まれる。
 子どもの紫外線防御の考え方として、心身の発達を考えると、子どもは大いに外で遊ばせることが大切であるが、強いサンバーンを起こさせないようにし、色白の子どもは特に注意する。帽子、衣類での防御を第一にし、防ぎきれない顔面などにのみサンスクリーン剤を使用する。女性のシミ防止対策と同一視しないようにする。子どものサンスクリーン剤使用については、サンスクリーン剤自体の課題として、皮膚が脆弱な6か月以下ではその使用はあまり勧められない。歩き出すまでは日陰、衣類、つばの広い帽子などでの防御を主体とする。
サンスクリーン剤をプール授業の際使って良いかという点については、サンスクリーン剤で実際にプール水が汚染するというデータはなく、文科省の基準はクリアできる。むしろプールサイドに日よけを設置するとか、ラッシュガードを着用させるなどの工夫が望まれる。
紫外線防御のまとめとして、日本人は白人と比べ、紫外線による皮膚癌発生リスクは高くないが、超高齢化社会においては、長い潜伏期間を持つ紫外線発癌を予防する必要がある。紫外線防御は小児期から始め、生涯継続する必要がある。紫外線防御のポイントは、ライフスタイルを見直し、過剰な、あるいは無用な紫外線曝露を避ける、衣類などで物理的に防御する、サンスクリーンを効果的に塗布するなどである。

3.ビタミンD不足の懸念
 ビタミンDは大部分UVB照射された皮膚で生合成されるが、食物、サプリメントで補給可能である。過剰に紫外線に当たってもビタミンDは壊される。ビタミンD欠乏は骨形成異常を生じることは明らかである。その他様々な全身疾患のリスクを高める可能性が疫学的調査で指摘されているが、十分に検証されているわけではない。寝たきり高齢者などで全く戸外へ出ず、食事摂取不足や、肝臓、腎臓の機能低下がある場合や、妊婦、授乳中の女性はビタミンD欠乏に注意を要する。
ビタミンDレベルを適切に保つための推奨日光曝露量は、地域(住所)や季節、時刻、天候、服装、皮膚色(スキンタイプ)など多くの要因で左右されるため、一律に「○○分」と表現することはできない。概算では必要ビタミンDを一日400-1000単位(10-25μg)とした場合、東京都心、8月1日の昼ごろ、皮膚の25%(概ね、両腕と顔に相当)をサンスクリーン剤なしで露出して、雲が少しある晴れた日に外出するとして3分間、1月1日の昼ごろに12%(顔と手程度に相当)を露出して外出すると約50分間と試算される。
紫外線防御がビタミンD不足をもたらす可能性については、通常のサンスクリーン剤使用程度ではビタミンD欠乏は生じない。しかし、サンスクリーン剤塗布を含めた紫外線防御を過度に行った場合は、ビタミンD不足が生じる可能性がある。また、日射量不足、経口摂取不足、加齢などのリスクがあるとビタミンD不足が生じる可能性が高まる。光発癌リスクとビタミンD欠乏を勘案した場合、どの程度の紫外線暴露/紫外線防御が適切かは試算が困難である。ビタミンDは食事、サプリメントなど経口摂取で補充可能であることから、ビタミンD欠乏を懸念して、あえて日光浴をする必要はないと考える。

4.まとめ
紫外線は「百害あって一利のみ」であり、一利はビタミンD生合成である。光老化は自然老化と異なり、予防可能であるので、紫外線防御は余分な紫外線に当たらない生活態度を心がける。紫外線防御の第一の目的は、超高齢化社会における皮膚がん防止である。紫外線防御の最後の砦はサンスクリーン剤であり、効果を高めるために二度づけが推奨される。紫外線を恐れるあまり、女性の紫外線対策を小児にそのまま適用するのは問題があり、極端な紫外線防御はビタミンD不足を招く可能性がある。しかし、ビタミンD欠乏を懸念して、あえて日光浴をする必要はない。従って紫外線に当たる、当たらないは、極端でなければ問題ないと考える。