透析にならないために 高血圧・糖尿病から腎臓を守ろう

2017.02.25

平成29年2月25日(土)
柳沢ファミリークリニック 院長
柳澤明子

現在、日本には高血圧の患者さんが約1000万人、糖尿病の患者さんが約950万人いると言われています。高血圧・糖尿病は完治することは難しく、生活習慣の改善や継続的な投薬治療を受けないとコントロールできません。高血圧・糖尿病の患者さんが、薬をきちんと内服せず、生活習慣を改善しないままでいると、腎臓の機能障害を合併することがあります。腎臓の機能障害が進行するとやがて腎臓死となり、腎臓の代替治療を受けなければ生命を維持できなくなります。

現在、世界で行われている腎代替療法は、血液透析・腹膜透析・腎移植の3つです。日本では、腎代替療法を必要とする患者さんの97%が血液透析を行っています。腹膜透析は2-3%、腎移植を受ける方は0.3%ほどです。1967年に日本で透析治療が保険適用となってから、日本の慢性透析患者数は増え続け2015年12月には32万人となり、国民の400人に1人が透析治療を受けていることになります。どんどん患者さんが増え続けている原因は糖尿病・高血圧に合併する腎機能障害によることがわかっています。昔は、慢性糸球体腎炎という腎臓病による透析導入患者数が多かったのですが、年々糖尿病による腎症や高血圧による腎症からの透析導入数が増えています(右図)。

 なぜ糖尿病や高血圧は腎機能を悪化させるのでしょうか。

腎臓は握りこぶしくらいの大きさで、ソラマメみたいな形をしている臓器です。腎臓の代表的な機能は尿を作ることです。体にとって不要な老廃物や余分な水分を尿として体外に排泄して、体の状態を安定させています。腎臓の外表面に近い部分には腎臓の機能をつかさどるネフロンが集まっており、1個の腎臓に約100万個存在します。ネフロンは毛細血管の塊である糸球体とそれを包むボーマン嚢、ボーマン嚢から続く尿細管からできています。心臓から送り出された血液が腎臓に運ばれると、糸球体部分で血液は濾過されます。高血圧や糖尿病は血管の脆弱性を引き起こすため、毛細血管の塊である糸球体は高血圧や糖尿病のコントロールが悪いと、ボロボロになって破壊されてしまいます。その結果、タンパク尿がでるようになり、ついには糸球体がつぶれます。糸球体がつぶれると、老廃物や余分な水分は体外に出せなくなります。このように、高血圧・糖尿病のコントロールが悪い期間が長期に及ぶと、血管の塊である糸球体にダメージが加わり、腎機能に影響が出るのです。

さらに、 糖尿病・高血圧患者さんが腎機能障害を合併すると問題なのが、心血管病のリスクの上昇です。腎疾患の原因が糖尿病の方は、通常の糸球体腎炎の方より、心筋梗塞や脳梗塞などに罹患するリスクが6倍高いのです。高血圧の方は3-4倍のリスクになります(右図)。腎機能障害が進み腎死となっても、透析を行えば通常の生活を営むことが可能ですが、心筋梗塞や脳梗塞になってしまうと、生命に危険が及ぶだけでなく、その後寝たきりになってしまう可能性もあります。高血圧・糖尿病の方が腎臓を守らなければならないのは、透析にならないためだけでなく、心血管病を予防するためでもあるのです。

 

慢性腎臓病は、タンパク尿が3カ月以上継続した場合、あるいは、腎機能障害が3カ月以上継続した場合に診断されます。腎機能は糸球体濾過量で判断され、糸球体濾過量が60以下を腎臓の働きが悪いと判断します。糸球体濾過量は血清中のクレアチニン値と年齢・性別・体格から計算されます。尿検査でタンパク尿の有無がわかります。そして、採血検査で血清クレアチニン値がわかります(右図)。定期的に尿検査・血液検査を行いながら、腎機能障害を早期に発見することが大切です。

 

定期的に腎機能をチェックするだけではなく、普段から腎臓を守ることも必要です。腎臓に負担をかける以下の因子をコントロールすることが大切です。

(1)糖尿病・高血圧・肥満

糖尿病で治療中の方は、かかりつけ医の先生に定期的に採血をしてもらい、HbA1cを7未満に維持することを目標にしてください。糖尿病のコントロールが悪いと、尿にアルブミンというタンパクが検出されるようになります。アルブミン尿が認められるということは糸球体に障害が出てきたことを意味します。糸球体の障害が進むとアルブミン尿がより悪化し、急速に腎機能障害が進行します。したがって、糖尿病の方は血糖のコントロールしHbA1cは7以下に維持し、アルブミン尿がでないようにしましょう。すでにアルブミン尿が出ている方やタンパク尿が出ている方は、血糖に加えて高血圧のコントロールがとても重要になってきます。

糖尿病やタンパク尿を認める方は、自宅血圧でBP 125/75未満を目指してください。脳血管や冠動脈疾患になったことがある方は、BP 135/85未満を目指してください。診療室での血圧と自宅での血圧は違いますので、高血圧の方は自宅での血圧測定も行いましょう。

(2)塩分

食事の中で腎臓に負担をかける因子として最も注意したいのが、塩分です。塩分10g摂取すると、1リットル以上の水分が血管内に引き寄せられます。その結果、血液量が増加して血圧が上昇します。これを繰り返すことによって、血管内皮細胞が傷つけられます。血管の塊である糸球体にも同様のことが起きるため、腎機能に影響するわけです。1日の塩分量を減らすだけで、日中の血圧も夜間の血圧も顕著に下がることが報告されています。高血圧の方は1日6g以下が目標ですが、突然塩分制限してしまうと味が薄すぎて、長続きしません。できるところから、少しずつ継続することが大切です。外食は塩分が多いので、外食する日は朝食・昼食にはお味噌汁や漬物は控えてみてください。醤油やソースは控えて、香辛料やお酢などで味に変化を加えてみてください。薄味になれていくと、食材の味がよくわかり、味覚が敏感になります。

(3)内服薬・サプリメント

腎臓に負担をかける薬剤として、消炎鎮痛剤と造影剤が代表的なものとして知られていますが、普段の生活で何気なく摂取しているサプリメントや市販薬にも腎臓に悪影響をもたらすものがあります。一番気を付けなければならないのが、消炎鎮痛剤です。頭痛や生理痛・関節痛・発熱などで内服する薬で、ロキソニン・バファリン・セデス・イブプロフェン・ナロンエースなどです。これらの薬は腎臓の糸球体の血流を低下させ、腎機能を悪化させます。腎機能障害と言われている方は医師に確認してから内服してください。腎機能障害がない方でも脱水状態で内服すると腎機能を悪化させることがあるので、水分を十分に摂取して内服しましょう。

また、腎機能が低下している方が内服すると薬が体に蓄積し、副作用が出やすくなる薬もあります。腎機能が低下している方が、胃薬でよく知られているガスター10を長期にわたって飲み続けると、意識障害やけいれんを起こすことが知られています。アルミニウムを含む胃薬やマグネシウムを含む便秘薬も大量に長期にわたって内服するのはやめましょう。1週間くらい服用して、症状が改善しない場合は、かかりつけ医に相談してください。

そして、健康に良いと言われるサプリメントや健康茶にも注意が必要です。利尿剤が含まれる健康茶やアリストロキア酸を含む中国ハーブが原因で腎機能障害となった報告が相次ぎました。現在の日本で処方されている漢方薬にはアリストロキア酸は含まれていませんが、よくわからないサプリメントなどは服用するには避けましょう。また、長期で飲み続けることも避けてください。

 

<最後に>

腎機能障害は症状やステージによって治療法や食事療法が異なるため、ご自分の現在の状態を把握することがとても大切です。①かかりつけ医を見つけて、継続して治療や生活指導を受けてください。②塩分制限はとても大切です。少しずつ薄味に慣れていきましょう。③必要以上の薬を内服すること、サプリメントを常用するのをやめましょう。④テレビやインターネットの情報に振り回されないようにしましょう。以上、4点に気を付けて、腎臓を守ってください。