江東区医師会 区民公開講座 あなたの腎臓の機能は何点ですか?~大切なあなたの腎臓を守るために出来る事~
2026年2月28日(土) 15時00分~
江東区医師会館 4F 講堂
区民公開講座
あなたの腎臓の機能は何点ですか?
― 大切なあなたの腎臓を守るために出来る事 ―
東京都立墨東病院 腎臓内科
医長 井上 佑一
今回は、「あなたの腎臓の機能は何点ですか?―大切なあなたの腎臓を守るためにできること―」という題で、慢性腎臓病(CKD)についてお話させて頂きました。
慢性腎臓病(CKD)は、尿や血液の検査などで腎臓に異常を認め、その異常が少なくとも3か月以上続けて認められることで診断される病気です。蛋白尿の基準としては、0.15g/gCr以上(0.15g/24時間以上)の状態が継続する事です。GFRの基準としては、GFR60ml/min/1.73㎡未満の状態が続くことです。GFRは、血液検査で分かるクレアチニン(Cre)濃度と年齢、性別を用いる事で、推算GFR(eGFR)を簡単に計算する事ができます。これが、腎臓の機能の点数になります。
腎臓は、体に溜まった余分なものを排泄するだけでなく、赤血球を作るホルモンを出す働きや、ビタミンDを活性化して骨を健康にするなど様々な働きを持っています。加えて、CKDと心血管疾患(CVD)は双方向に密接に関連します(これを心腎連関と言います)。そのため、腎臓の機能が低下する事で、貧血/カルシウム・リンの異常や副甲状腺機能の亢進症/心血管合併症など様々な合併症が出現します。
令和5年の時点で、CKDの患者数は約2000万人と推計されています。CKDのステージは、eGFR値と蛋白尿の量で分類されますが、ステージが進行すると、末期腎不全だけでなく、心血管合併症の発症のリスクも上がることが知られています。そのため、CKDの早期発見・早期治療が重要になります。一方で、CKDは自覚症状の乏しい病気です。自覚症状が無いからといって放置すると、腎機能が低下して末期腎不全になる、或いは心血管合併症を発症する危険があります。健康診断で尿検査の異常や腎機能低下を指摘され、CKDが疑われるため受診するよう指導された場合は、無症状でも一度かかりつけ医や専門医療機関を受診して頂くことがとても大切です。
2024年の透析導入患者の原疾患の割合をみると、糖尿病性腎症、腎硬化症、慢性糸球体腎炎、多発性嚢胞腎の順に多いとされていますが、一方で、原疾患不明が15.4%とされています。原疾患が明らかでない透析患者に遺伝子検査を行ったところ、1割程度で遺伝性腎疾患が見つかったとする報告(Fujimaru T et al., Kidney Int Rep. 2024)もあり、今後遺伝子診断により原因不明のCKDの原因が明らかになる可能性があります。
CKDにおいて、腎臓の機能を守るためには、まず早期発見・早期治療が非常に重要です。
症状が無くても、かかりつけ医や専門医の受診を勧められたら、まず一度受診する事が重要です。
かかりつけ医と腎臓専門医は、協力して連携をとりながら、CKDの治療を行っていきます。
CKDの治療としては、生活習慣の改善(禁煙・節度ある飲酒・適切な飲水・日常的な運動・排便管理・感染予防/ワクチン接種・口腔ケア・適切な睡眠時間)、肥満の改善、栄養管理、内服治療(血圧・代謝性アシドーシス・脂質異常症の治療、SGLT2阻害薬の使用)等が重要です。血圧の管理に関しては、まず自宅で正しく血圧を測定する事が大切であり、その方法(上腕血圧計で測定する、朝と晩に2回測定してその平均をとる、リラックスした状態で測定する等)についてお話させて頂き、糖尿病や蛋白尿の有無などに応じた降圧目標と降圧剤の使い分けについてお話しさせて頂きました。SGLT2阻害薬は、元々尿への糖排泄を増加させ、血糖値を改善させる薬であり、糖尿病患者の腎機能保護に有用であることが分かっていました。近年、糖尿病を合併しないが蛋白尿のあるCKD患者に対して使用すると、腎機能保護効果が有る事が分かり、使用が推奨されています。但し、使用開始後早期の腎機能低下や、脱水症には注意が必要です。
又、CKD患者さんでは薬の内服に関していくつか注意点があります。解熱鎮痛薬のNSAIDsは腎機能を悪化させる可能性があり避けた方が良いこと、腎排泄型の内服薬は、腎機能に応じて用量調整が必要である事、体調が悪い時(シックデイ)には一部休薬する必要のある薬がある事などに注意が必要です。
さらに、CKD教育検査入院についてお話させて頂きました。CKD進行の要因を調べる、心血管合併症が無いかの検査を行う、自己管理のために患者さんに正確な知識を習得して頂く事などを集中的に行うことを目的に、CKDstage3-5の方に、1週間程度のCKD教育検査入院をお勧めする場合があります。CKD教育検査入院により、eGFRの低下速度が改善したとする報告もあります(Machida S et al., Clin Exp Nephrol. 2019)。
最後に、当院外来で、糖尿病関連腎臓病を原疾患とするCKDの患者さんに集学的治療を行い、eGFRの低下速度が改善した1例を、eGFR slopeの図を提示してお話させて頂きました。
まとめとして、CKDのためかかりつけ医や腎臓専門医の受診を勧められたら、症状が無くても、まず1度受診をお願いしたいこと、CKDの早期発見、早期治療は、大切な腎臓を守るためにとても重要であること、かかりつけ医と腎臓専門医は連携して、CKD患者さんの腎臓の治療を行っていくことをお話しし、講演を終了させて頂きました。
