江東区医師会 区民公開講座 アイフレイルは病気の手前かも!? -人生100年時代の目の健康寿命を考える-
2025年6月21日(土) 15時00分~
江東区医師会館 4F 講堂
区民公開講座
アイフレイルは病気の手前かも!?
-人生100年時代の目の健康寿命を考える-
南砂町駅前にこにこ眼科
院長 志和 利彦
1.フレイルとは
フレイルとは「老化に伴い、身体能力が低下し、健康障害を起こしやすくなった状態。健康と要介護の中間である」と言われています。「最近ちょっと痩せてきた」、「走るとすぐに息が切れる」、「以前よりも疲れやすい」などの症状が該当します。
2019年に報告された「平均寿命と健康寿命の差」によると、「平均寿命」は男性81.41歳、女性は87.45歳でした。しかし自立して生活ができる「健康寿命」は男性72.68歳、女性75.38歳でした。「平均寿命と健康寿命との差」、男性8.73年と女性12.06年の期間はフレイルに陥っていることを意味します。
2.アイフレイルとは
次の10項目のうちに該当する項目はありますか?1)目が疲れやすくなった。2)夕方になると見にくくなる。3)本を長時間読むことが減った。4)食事時にテーブルを汚すことがある。5)眼鏡をかけても見にくいと感じる。6)まぶしく感じる。7)見えにくいときまばたきが多い。8)直線が波打って見える。9)段差・階段が危ないと感じる。10)信号を見落としそうになる。
10項目のうち2項目以上該当するとアイフレイルの可能性があります。これらの症状には白内障、老視、ドライアイ、加齢黄斑変性、緑内障などの病気が隠れている可能性がありますので眼科を受診することを勧めます。
国民生活基礎調査(2013年)によると、介護が必要になった理由として脳卒中18.5%、認知症18.8%、骨折・転倒11.8%、心疾患4.5%、糖尿病が2.8%を占めており、視覚・聴覚障害はわずかに1.8%です。しかし、脳卒中、心疾患、糖尿病は眼科での定期的な眼底検査によってその発生が減らせる可能性があります。また認知症についても白内障手術や眼鏡の適切な使用によってその発症を遅らせる可能性があることが知られています。したがって、良好な視機能の維持や眼科での定期検診が介護に至る時間を遅らせ、健康寿命を延長できる可能性があります。
3.早期発見のためには眼底検査が必須(視力が良いだけでは健康とは言えない)
眼の病気には「視力検査では見つからないが眼底写真から見つけることが可能なもの」が沢山あります。1)緑内障、2)糖尿病網膜症、3)高血圧、動脈硬化、4)動・静脈の閉塞症、5)加齢黄斑変性などが挙げられます。視力は眼の中の黄斑という部分の働きの影響を受け、この部分が障害されると、視力低下や視野の中心が見えにくくなるなどの症状が現れます。言い換えると、黄斑さえ機能が維持されていると、他の部位に病変・異常所見があっても自分では気が付きにくいのです。視力が良いから自分の目は健康であるということにはならない理由です。
2008年から特定検診がメタボ検診に切替わり、検査項目が減ってしまい、国民の皆さんが眼底検査を受ける機会が減りました。皆さんができる対策として、人間ドックや職場の検診で眼底検査を申し込むことができる場合は、ぜひ申込んでください。また、メガネが合わなくなったと感じたらメガネ屋さんに行く前に眼科を受診し、目に病気がないかチェックを受けましょう。点眼薬を欲しくなったら、眼科で診察・処方を受けましょう。高血圧・糖尿病などで通院中の方は内科のほかに眼科も受診してください。視力低下を自覚しないことで安心なさらないでください。
4.緑内障と白内障
2000年から2001年にかけて岐阜県多治見市で、眼底検査や眼圧検査を含めた緑内障の疫学調査が行われました。その結果、40歳以上の方の20人に一人(5.0%)が緑内障になっていることがわかりました。開放隅角緑内障と診断された119名のうち、調査前に緑内障と診断されていたのは8名だけでした。111名は調査前には緑内障と診断されていなかったのです。眼底検査を含めた検診を受けることの重要性が明らかとなりました。印象派の巨匠、クロードモネが白内障を患い、白内障手術を受けたことはあまりにも有名です。通常の白内障は視力低下や色彩感覚の変化などの自覚症状を生じるパターンが知られていますが、水晶体の厚みが拡大して、虹彩との接触抵抗が増して、狭隅角になってしまう、自覚症状を伴わないパターンの2種類があります。狭隅角は胃カメラや、麻酔、色々な内服薬がきっかけとなって急性緑内障発作を生じることがあります。しかし、急性緑内障発作を発症するまでは自分では気が付かないので、眼科での定期的な診察が重要です。
5.まとめ
人生100年時代を迎えて、眼の健康寿命を延長させることの重要性が高まっています。アイフレイルは、視力低下のように、自分で気が付くことができるような症状を伴うものばかりではありません。むしろ、視力は良いのに知らない間に本当に病気になってしまうものがたくさん潜んでいます。メガネ作成、点眼薬購入など、健診などの機会に、積極的に眼科での診療を受け、不自由のない視生活を送りたいものです。
