江東区医師会 区民公開講座 おしゃれ皮膚障害~そのかゆみ・かぶれ、原因は身近なものかも?

2026年4月4日(土) 15時00分~

江東区医師会館 4F 講堂

 

区民公開講座

おしゃれ皮膚障害

~ そのかゆみ・かぶれ、原因は身近なものかも?

 

あさ美皮フ科亀戸駅前

院長 藤井 麻美

 

 「おしゃれ皮膚障害」をテーマに、日常生活の中で行われている化粧やヘアケア、装飾品の使用などが皮膚トラブルの原因となりうることについて解説した。きれいになりたい、身だしなみを整えたいという気持ちは自然であり、おしゃれは生活の質を高める大切な行為である。しかし一方で、そのおしゃれがかゆみや赤み、湿疹といった皮膚症状を引き起こすことも少なくない。実際の診療においても、こうした相談は日常的に認められる。

 具体例として、ファンデーションによる顔面のかぶれ、リップクリームやアイテープ、まつ毛エクステンション、染毛剤、金属アクセサリーなどによる接触皮膚炎を提示した。これらはいずれも特別な行為ではなく、多くの人が日常的に行っているものである点が重要である。すなわち、誰にでも起こりうるトラブルであるという認識が必要である。

 これらの皮膚トラブルの多くは、いわゆる「かぶれ」、すなわち接触皮膚炎で説明される。接触皮膚炎は大きく、刺激によるものとアレルギーによるものに分けられる。刺激性接触皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下した状態で外的刺激が加わることで生じるものであり、使用量や頻度に依存し、基本的には誰にでも起こりうる。一方、アレルギー性接触皮膚炎は、特定の成分に対して免疫学的な反応が成立した場合に生じ、少量の接触でも繰り返し症状が出現するという特徴を持つ。

 皮膚のバリア機能は、主に角質層によって担われている。角質層は非常に薄い構造でありながら、外部からの異物侵入を防ぐ重要な役割を果たしている。この構造はしばしば「れんがの壁」に例えられ、角質細胞がれんが、細胞間脂質がそれをつなぐモルタルのように働くことで、隙間のない防御機構を形成している。しかし乾燥や摩擦、過度の洗浄などによってこの構造が乱れると、外からの成分が皮膚内に侵入しやすくなり、炎症が惹起される。

 さらに重要な点として、同じ製品であっても、すべての人に同じ反応が生じるわけではなく、また同一人物であってもその時の皮膚状態によって反応が変化することが挙げられる。皮膚のバリアが保たれている状態では問題なく使用できていた製品でも、乾燥や花粉、摩擦などによりバリアが乱れた状態では刺激となり、トラブルを引き起こすことがある。すなわち、「今まで使えていたから大丈夫」という判断は必ずしも成り立たない。

 対応として最も重要なのは、皮膚に異常が生じた際に無理に使用を継続しないことである。赤みやかゆみが出現した場合には、原因となりうる製品の使用を一旦中止し、まず皮膚の状態を整えることが基本となる。その上で、状態が改善した後に慎重に再開し、問題の有無を確認するという手順が望ましい。皮膚が障害された状態で新たな製品を追加することは、かえって症状を悪化させる要因となる。

 また、原因の特定や適切な対応が困難な場合には、皮膚科専門医への相談も重要である。皮膚科では、皮疹の分布や形態、使用歴などから原因を推定し、必要に応じて治療と再発予防の指導を行う。必ずしも原因が明確に特定できるとは限らないが、皮膚の状態に応じた適切な対応を行うことが再発防止につながる。

 本講演を通じて伝えたいのは、おしゃれを否定することではなく、適切な順序を理解することである。すなわち、「まず皮膚を整え、そのうえでおしゃれを楽しむ」という視点である。皮膚トラブルが生じた際には一度立ち止まり、皮膚の状態を優先することが、結果としておしゃれを長く安全に楽しむために重要である。