地域で子どもを虐待から守ろう・・・「虐待の気づき方と対処法」

区民公開講座 平成22年7月10日開催 まとめ

特定非営利活動法人
子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク
理事長 山田 不二子

「子ども虐待の通告」と言うと、どんなイメージを持ちますか? 我が子を虐待する悪い親を通告することと思っていませんか? 児童福祉法には要保護児童(守ってあげる必要のある子ども)を通告するようにと定められており、児童虐待防止法には「虐待を受けたと思われる児童」を通告するように規定されています。“虐待する親”を通告するのではなく、“虐待を受けたと疑われる子ども”を通告するということを忘れないでください。

 親を通告すると思ってしまうと、親を疑うことに罪悪感を感じてしまいます。または、親に恨まれるのではないかと心配になってしまうでしょう。

 でも、虐待・ネグレクトを調査したり、子どもを保護したりする職責を担う専門機関に、親に虐待やネグレクトをされて支援や保護をする必要のある子どもがいることをお知らせして、その子どもを守ってあげることなのだとわかれば、通告に対するためらいが和らぐことと思います。通告は、虐待やネグレクトを受けて苦しんでいるのかもしれない子どもを助けるための支援を開始するのに必要な“合図”ないしは“スイッチ”なのです。子どもを虐待やネグレクトから救うことと、親の人権を侵害する危険性とを天秤にかけるとき、人はつい、声の大きな親(大人)の方を重要視しがちになります。でも、それは、取りも直さず、より弱い立場にある子どもを救える可能性から手を引くことになるのです。

 子どもを裏切らないでください。今年の1月に幼い命を落とした江戸川区の小学1年生は、ある歯科医師に虐待の事実を語りました。そして、その歯科医師は勇気をもって、その子を通告しました。それなのに、私たちはあの子の命を救ってあげることができなかったのです。あの小学1年生の尊い命に報いるためにも、身近にいる子どもに虐待やネグレクトが疑われたら、その子どもを“守るべき児童(要保護児童)”として通告しましょう。